制度化された「マルチメディア放送」の特長

TOKYO FMおよびJFNが目指すVHF-LOW(90-108MHz)で予定されている「地方ブロック向けマルチメディア放送」と、VHF-HIGH(207.5MHz~222MHz)で実施される予定の「全国向けマルチメディア放送」は、従来の「音声放送(ラジオ)」、「テレビジョン放送(地上波テレビ)」とは、大きく二つの点で異なります。

一つは「ハード・ソフトの分離」、もう一つは「従来の地上放送と重複した県域放送としない」ことです。

●ハード・ソフトの分離のメリット

1.ハードを共同化することによる投資効率化

ハード(受託放送)事業、ソフト(委託放送)事業を分離した上で、ハード事業者が一括して連結送信をするため、結果的にインフラ投資が割安になります。

旧来の免許制度では、放送免許を受けた「放送事業者」がそれぞれに、鉄塔やアンテナ、送信機などの投資を行わなければなりませんでした。

2.周波数の効率利用

旧来の免許のように、個々の放送局(マルチメディア放送では委託放送事業者)がそれぞれに電波を発射する場合には、混信を起こすことを避けるため、お互いの周波数の間に「隙間」を十分に取る必要が生じます。

これを連結送信(束ねて送る)することによって、「隙間」を省き、国民にとって限られた資源である電波(周波数)を従来の制度より有効に使うことができます。

3.新規参入を促進できる。時代のニーズに即応したプレーヤーの入退場が容易。

旧来の制度では、一旦免許を取得すれば事実上「利権」化していました。ハード(インフラ)もソフト(編成・コンテンツ)も「一致」の免許形態であると、放送局は個々に巨額の設備投資を必要とします。

免許期間中だけではハード投資の回収ができないため、自己の免許が更新(形式上は「再免許」)してもらえないと、既存放送事業者の経営には大きな打撃を受けてしまいます。

逆に、ある周波数を利用する放送局が退場した後、その跡地で新規参入することができたプレーヤーにしても、免許を受けてから新たに設備投資をしなければならないとしたら、その周波数は、暫くは「準備中」とならざるを得なくなります。

その結果、行政も既存の免許事業者に様々な問題があったとしても、「免許取消」や「入退場」まで踏み込むには慎重にならざるを得ませんでした。

ハード・ソフトを分離すれば、少なくとも委託放送(ソフト)事業者においてはコンテンツ・サービスさえあれば、(もちろん事業認定を受けることが前提ですが)経営的には受託放送(ハード)事業者と契約さえすれば、巨額の初期投資を要せずとも速やかに参入できます。

私たちは簡便のために「Jリーグ方式」と呼んでいますが、利用者保護などの一定の条件には配慮をするとしても、理論的には、時代の変化に即応して、免許更新時等一定の周期で、一定の割合のプレーヤーが入退場することができます。

有名なファッションビルでは、定期的に時代に合わないテナントを入れ替えることで、ビル全体としてはブランドを維持し、長年にわたって消費者を惹き付け続けています。

基準を単純に「収益力」とすることは適当でないと考えますが、言論の自由、多様性の保持を実現しつつ、放送局の経営の透明性確保や、番組の品質向上への緊張感が担保されるようになると想像されます。

●従来の地上放送と重複した県域放送としないこと

「V-LOW」においては、「①地方ブロックマルチメディア放送」と「②デジタル新型コミュニティ放送」の二つの放送の組み合わせが設計されました。

これはAM・FMラジオ放送や、地上波テレビジョン放送が、地デジ化後も「県域免許」として継続することため、それと重複しないように考慮されたものでした。

「都道府県単位」という枠を越えて、市民が自動車や公共交通機関等の移動手段を使って、現実に活動している「①広域圏」と、日常の生活の範囲である市町村連合レベルの「②コミュニティ圏」との組み合わせとされました。

地域情報の発信や、地域経済の活性化につながる情報コンテンツを流すことを目指すとともに、従来の県域放送とは異なる広告ニーズも開拓することが出来るものとされました。

つまり「V-LOW」は、「V-HIGH」で実施される「全国向けマルチメディア放送」が、大手通信会社の「一斉同報通信網の代替」として活用され、コンテンツが全国一律の内容である「有料モバイルテレビ」とするビジネスモデルとは、根本的に思想が異なっています。

TOKYO FMおよびJFNは、大手通信会社だけではなく、種々の参入希望者が多彩な新規サービスを持ち寄って切磋琢磨することができることや、地方ブロック新聞社や地元密着したタウン情報誌と連携して、東京発で全国一律の一方的なコンテンツ配信ではなく、地方からの情報発信ができることに着目して、特にV-LOWの放送に注力するものです。